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最後のユニコーン/P・S・ビーグル/ハヤカワ書房(ハヤカワFT文庫)
不思議な印象を残す物語である。
話はいたってシンプル。
たったひとりでライラックの森に住むユニコーンを残して、世界中からいつのまにか、ユニコーンというユニコーンが姿を消してしまう。そのとり取り残されたユニコーンが消えた仲間の消息を求めて旅に出るというものだ。
物語り全体を貫く幻想性、象徴的で美しいイメージ。モダンファンタジイの最高傑作のひとつにあげられるのも頷ける作品である。
伝説と現実、永遠なるものと限りある泡沫との対比が、作中、何度も出てくる。それは、あたかも伝説というファンタジックな概念こそが永遠であり、移ろいやすい現実の方が虚構に過ぎないといっているかのようだ。
ユニコーンを意のままにできないのと同じように、人は永遠というものを手に入れることは決してない。
であるからこそ、結末の部分の切なさ、やるせなさが際立つ。
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