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ローワンと魔法の地図 ローワンと魔法の地図 ローワンと魔法の地図/エミリー・ロッダ/あすなろ書房

 リンの村を流れる川が、枯れてしまった。このままでは川の水しか飲まない家畜のバクシャーはもちろんのこと、村のみんなも、生きてはいけない。そこで、水を取り戻すために、竜が住むといわれる魔の山の頂きめざして、村のえりすぐりの勇者たちが旅立つことになった。運命のいたずらか、〈賢い女〉シバのかけた魔法によって,、六人の村きっての勇者達に混じって、内気で臆病な少年、バクシャー係りのローワンも、一行に加わることになってしまう。
 シバの目には、村でいちばんの臆病者のローワンも、勇気があるとされる六人も、たいして変わりなく映ったのではないだろうか。幼い頃にはシバがそばを通ると、母親を呼んで助けを求めた子どもが、年齢を重ねて勇を誇っている。シバにとっては、さぞかし滑稽なことであろうと思える。
 年をとる中で身に付けた、「虚勢」という名の心の鎧。この物語は、読む者に、本当の勇気とは何かを問いかけている。
 旅の中で、ローワン以外の、勇気ある者とされていた六人の村人は、予言どおり、次々と脱落していく。今までの暮らしの中で、他人からなんとか隠しとおしてきた自分自身の弱さゆえにである。
 ストロング・ジョンがローワンに言う言葉が印象的だ。「怖がりながら、きみは危険に立ちむかった。そして、怖がりながら先へと進むんだ。それが本当の勇気なんだよ、ローワン。怖がらないのは、おろか者だけさ」
 ジョンの言葉どおり、リンの村を救ったのは、ローワンの本当の勇気だった。
 平易で読みやすい作品だが、決して内容は薄っぺらなものではなく、読み物としても質が高い。オーストラリアで人気の児童文学というのにも、うなずける。
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