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ペンキや ペンキや ペンキや/文:梨木香歩 絵:出久根育/理論社

 お客の望んだ色を作り出すことができず、「自分にはペンキ塗りの才能がないのでないか」と悩んだペンキや見習いのしんや。彼は、一度も顔を見たことがないままに死んでしまった父親のお墓を訪ねにフランスへ旅立ちます。しんやの父親はペンキ塗りの名人でしたが、仕事先のフランスで、しんやが赤ん坊の頃に心臓麻痺で死んでしまったのでした。しんやはお墓を見つけることはできませんでしたが、父親が使っていたペンキ塗りに使うハケを手に入れます。それが、父親と同じ「不世出のペンキや」となる、しんやの人生の転機になりました・・・。

 一人のペンキ職人、しんやの一生を淡々と描いた物語。抑制された梨木香歩の文章は、静かに時間が流れるように、しんやの一生を綴っています。
 また、この作品でぜひふれておきたいのが、出久根育の絵です。優しくも豊かな色彩と幻想的なタッチで描かれた絵の数々は、見る者を惹きつけて放しません。
 最初に絵を見たときは、印象的ではあるものの、登場人物たちが無表情なようで違和感を覚えました。しかし、じっくり見ているうちに、人はひたむきで内省的な時、自ずからこういう表情になるのではないかという気がしてきました。
 深い深い、とても素晴らしい絵です。ページ全体から感動が湧き上がり、心に染み入ってきます。
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