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マジョモリ マジョモリ マジョモリ/文:梨木香歩 絵:早川司寿乃/理論社

 家の前にある、御陵と呼ばれる深い森。子供たちはこの森のことを「まじょもり」と呼んでいました。
 春は花が満開になる「まじょもり」。ある朝、主人公のつばきは森から届いた招待状を手に初めて森の奥へ行きます。
 森の奥で会ったのは、薄緑色の長い髪をして、古代日本風の衣装を身につけた女の人。彼女がつばきを招待してくれたようです。
 女の人はお茶とお供用の菓子・御神饌を振舞ってくれます。御神饌は、つばきは神官の家に生まれたので食べ慣れたものでしたが、味がほとんど無いものなので普段生クリームをはさんで、クレープみたいに何枚も重ねて食べていました。つばきは家から生クリームを持って来ることにしました。
 家に帰ってわけを話すと、お母さんは急いで生クリームを作ってくれました。
 お母さんは生クリームなどを入れたかごを持たせると、つばきを送り出しますが、その後、お母さんは、「大粒の涙をぽろぽろと」こぼして、「私もご招待されたーい」と、幼い子供のように泣き出します。つまり、お母さんも子どものころ「まじょもり」に招待されていたんですね。どおりで、つばきの話を聞いても不思議がるどころか、招待した女の人の正体を知っているような感じなのでした。
 つばきが再び「まじょもり」に行くと、そこへふたばという女の子がやってきました。ふたばは森に住む女の人のことをハナちゃんと呼び、どうやら以前からの知り合いのようです。実はふたばは、つばきと同じ年頃に戻ったお母さんなのですが、二人はそうとは知りません。このあたりは不思議な展開ですが、自然な流れで読めてしまいます。ふたば(お母さん)が、けっこう気の強い女の子なのには笑ってしまいました。
 生クリームをはさんだ御神饌や野原の味、夕暮れの味のお茶、日なたの味、森の味のお茶。つばきと、ふたばちゃん、ハナちゃんの三人のティーパーティー続きます。最後の、ハナちゃんの正体がわかるところには、作者である梨木香歩らしさを感じました。

 絵の早川司寿乃は、「からくりからくさ」の装丁や、文庫版の梨木作品の表紙カバー絵を描いている人。淡い色調ながら、すっきりとしたタッチがとても清々しく、素敵な絵本になっています。
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