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クラバート/オトフリート=ブロイスラー/偕成社
ヴェンド人に伝わる伝承、「クラバート伝説」を下敷きにして、ドイツの児童文学作家であるオートフリート=プロイスラーが1971年に発表した傑作長編児童文学、それが本書です。
時代は18世紀初頭、ひとりの少年クラバートがコーゼル湿地の水車場に見習いとして、入ります。そこで、親方と11人の職人達といっしょに始まるのですが、実はこの水車場には、とんでもない秘密がかくされていたのです。
どちらかというとゆっくりしたペースで始まったお話が、どんどん密度と緊張度を増していくのがとてもいいです。これだけの長編なのに、途中で、だれるなんてことはもちろんありません。寓話的な表現も、逆に読み手のイメージをふくらませるのに成功しています。
富や権力よりも貴重な自由と、ひとりの少女の愛をかち得るために、生と死をかけて、親方に最後の闘いを挑むクラバート。
手に汗をにぎるクライマックスの後の結末が感動的です。
18世紀初めの頃の、ヨーロッパの人々の暮らしが、よく伝わってくる作品です。物語をとりまく中部ヨーロッパの独特な雰囲気がいいんですよ。また、水車場の職人たちの暮らしぶりには興味深いものがありました。
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