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        ぼくの・稲荷山戦記/たつみや 章/講談社 
       
        マモルの家は、先祖代々、裏山の稲荷神社の巫女を務めてきた。ある日、マモルの家に、腰まで届く長髪に、和服の着流しという奇妙な風体の青年が下宿人としてやってきた。 
       守山というその青年の不思議な魅力に、マモルは次第に惹かれていく。 
       
       自然を守ることの大切さを問いかけるファンタジイ。 
       自らの利益の追求のために、自然を利用することしか考えない人間。その行き着く先はみじめな滅亡でしかないのに、それに気づかない。 
       そもそも、すべての生きとし生ける物は自然に生かされている存在なのである。太古の昔、人間は、自然の中の全てのものに、そこに宿る魂の存在を感じ、神を敬いつつ暮らしてきたと作者は言う。 
       それなのに、いつの頃から、人間はこのような手前勝手な、奢った存在に成り下がったのであろうか? 
       守山という青年に導かれ、内面から成長していくマモルとともに、読者は作者の言わんとすることを学びとっていく。 
       こういう作品のあり方は、ファンタジイという文学様式でならではのものである。 
       人間と自然の関係を問い直す「神様三部作」の第一作である。そのせいか、作品全体から、他の作品よりも初々しさが感じられる。 
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