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青い月と闇の森 青い月と闇の森 上・下/サイモン・R・グリーン
                /早川書房(ハヤカワ文庫FT)


 父王より、ドラゴン退治の命を受け、フォレスト王国の第二王子ルパートは旅に出る。
 しかし、雨の季節、重い甲冑を着込んでの旅は、ルパートが昔読んだ英雄伝とは大違いだった(甲冑の中に雨水が流れ込むうえに、トイレの用を足すのも一苦労と、主人公が愚痴ってるところでは、つい笑ってしまった)。それでも、やっとの思いで、ドラゴンの居場所をつきとめるのだが、なんとそのドラゴンは、悪逆非道どころか、蝶々を収集するのが趣味という気の好いドラゴンだったのだ。
 他にも、登場するキャラクターが一風変わっている。
 ちょっと、具体的にあげると、
 ・人身御供という名目で(実はその性格をもてあまされやっかいばらいされた)、
  竜のところへ置き去りにされていた男勝りで剣の達人という、じゃじゃ馬お姫様。
 ・追い剥ぎなのに、気弱で間の抜けたゴブリンたち。
  もちろん、追い剥ぎなんてまともに成功しない。
 ・大酒飲みの大魔法使い。
 ・臆病で不平ばかり言っている、ユニコーン。
 こうしてみると、この作品は単なるユーモア・ファンタジーのようであるが、そうではない。ユーモアは作品を存立せしめている不可欠の要素で、大きな魅力には違いないが、この作品のもっとも大きな魅力は、波乱万丈の手に汗握るストーリー展開にあるのだ。

 おおまかなストーリーは、先に触れた魅力あふれるキャラクターたちが、太古の闇からよみがえった邪悪の領主と闘うというもの。拡大するやみの木の森やデモン(邪悪の領主の手下)を破り、邪悪の領主を倒すことができるのか。フォレスト王国の命運はいかに。また、ルパートとじゃじゃ馬お姫様ジュリアとの恋の行方は。

 目録落ちが惜しまれる、よくできた冒険ファンタジーである。
 ただ、表紙カバーの絵は内容とイメージに隔たりがありすぎ、気に入らない。売れ行きが悪かったのは、そのせいもあるかも。(^^ゞ
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